失敗しない洗い張り・仕立て直し
@着物リメイク・和装コートオーダー 美どり

失敗しない洗い張り・仕立て直し

洗い張りのできない品物やしない方がよい品物がありますので、ご注意下さい

もともと、絹は、化繊のものよりも劣化が遅く、その寿命は50年以上と言われています。さらに言えば大島のように先染めのものは、定かではありませんが、100年はもつと言う業者もあります。

天然の繊維ですので、やはりその保管方法によって生地の寿命もかなり異なるのではないかと思います。絹は、よく呼吸していると言われるように湿度にすごく敏感です。ですから、タンスにしまいっぱなしにしないで、湿度の低い日や季節に時々は、湿気を抜くために陰干しなどすることが、袷の裏表のバランス保ち、絹自体を長持ちさせるコツだと言えます。

かなり、長持ちのする繊維なのですが、その強さは、カイコの質や生地に使われている絹糸の種類や量にも左右されます。昭和の40年代以前では、まだ質的に悪い品物も出回っていましたので、ものを見極めないと再生できないものもあります。

生地が劣化して、弱ってしまっている物

・このような物は、洗い張りすると生地が裂けたり、穴があいてしまいます。

 仮に、洗い張りがなんとかできても仕立ての途中で糸こきをすると生地がよれてしまうものがあります。

   → 見極めのポイント

●先ず生地を触ってみて下さい。たてに強めに少し引っ張ってみるとよれたり裂けそうになるものは、洗い張りするとまず、穴が開いたりさけてしまいます。見た目だけでは、解りませんが生地に触れて見ることは大事です。生地の薄さが分かります。*できれば、着用の時に目立たない下前の衿先などの生地を少し湿らせて、指先で少し強めにこするようにして生地の強さを確認しても良いです。

●裏地に綿やガーゼのような絹(ひどく黄色くなっています)を使っているようなものは、洗い張りに耐えられないものがよくあります。
逆に、生地の良いものは、裏地も良いものを使っていることがほとんどです。古いものでも裏地にしっかりとした正絹を使っているものは、先ず、大丈夫だと思います。

黄色く変色したシミのある物。

大きさやシミの種類にもよりますが、黄色く酸化したシミのあるものは、簡単には落とせません。落とせるとしても高額な料金がかかるか、柄を書き足すなどして染料や金彩で隠すような方法をとるしか有りません。

料金面で考えるならば、それを見えないように隠して仕立てる方が、お得です。仕立て直したときに隠れる所にあるシミならばそれがベストではないでしょうか。

  → 洗い張りに出すかどうか?判断のポイント

○先ず、衣紋掛けにつるしてみて下さい次に近くからと少し離れた所から全体によく見て下さい。シミの目立ち方を確認する必要があります。気になるものとそれほど分からないものがあると思います。ご自分の判断が必要です。自分でよく確認していないと後でトラブルの元になりますので宜しくお願いします。

○胸や背の部分に目立つシミのある物は、取れない場合、コートにはできません。一番上に着る物ですから特に背中や後ろ身頃によく見て下さい。他の人によく見られる所ですので、注意が必要です。ですが、裾の方にあるシミは、裾から膝くらいの高さにあれば、大抵の場合隠すことができます。だだし、この場合もコートの身丈と生地の長さにもよりますので、ご相談下さい。

○袖のシミは、ほどんど隠せません。ただし、前袖にできれば、着用の時は、手を下げているので目立たないものです。

折り目の汚れのすじが消えない物

   → 実は、よく着用されたきものに一番多いのがこの手の問題です。

やけ汚れと言って縫い込み以外の表に出ている部分の汚れがひどくて、特に上前の脇線や衽付け、袖付けなどの線が洗い張りをしても黒っぽく汚れの線になって見える場合があります。

程度にもよりますが、このような場合は、身巾寸法などを広げると目立つため寸法は広げない方が良いでしょう。 色の薄いきものは目立つ場合が多いので注意。

この手の問題は、洗い張りしてみないと汚れが、どのくらい落ちるかわかりませんが、あまり汚れのひどい物は、洗い張りをお勧めしません。ただし、汚れの程度を判断してそれでも良いと決めるのは、お客様です。

 →判断のポイントとして 
1.シミではなく、汚れがありそうか全体によく見る。

2.もし、汚れていそうなら一番汚れがひどくなる上前の衽付け線や脇線を少しほどいて中の縫い代との違いを比べるのがベストです。

3.あまり汚れの差がなければ、洗い張りしてキレイになる場合が多いです。

反物の巾の狭い物。

 洗い張りは可能でも反物の巾が足りなくて裄丈が取れないものがあります。

コートは、着物の上に着ますので、裄丈が着物より長くできなければなりません。肩巾は、着物と同じでよいのですが、袖巾は、少し広くないと着物が出てしまいますので、確認が必要です。

生地にあまりが出れば、袖の振りに生地を接いで仕立てることも可能ですが、コートの種類や丈によっては、できませんのでご相談下さい。

  → 巾の確認のポイント

○合わせる着物の袖巾を測ってみて、洗い張りするものと比べて下さい。

狭そうな場合は、表地の縫い代がどのくらいあるか手で探ってみて下さい。もし、縫い戻す必要が無ければ、袖の裏を少し解いて、縫い代を見て下さい。

化繊の生地を使用した品物。

・誠に恐れ入りますが、コンセプトから当店では、化繊の品物は、特別のもの以外は、お仕立てしていません。ミシンで仕立てられている物が多く、洗い張りしてもミシン目が残っていたり、縫い代が取っていないものがあるため仕立て直しできないからです。

○最近は、正絹と見分けがつかないようなものが、よくありますが、このようなものは、裏地にも化繊を使っていますので、ご確認下さい。

縫い込みの中にシミやキズが隠されている物。

洗い張りしてみないと分からないものが多いのですが、隠れている場所は、縫い代の中、特に

 → 共衿の中内揚げ(胴の縫い込み)の中ですので、何回も洗い張りして作り替えたものでなければ問題ありません。

色やけのある物。

・まれにですが、表に見えている色と縫い代になっている所の色がひどく違ってしまっている物があります。程度にもよるのですが、このようなものは、特に、紫系グリーン系に多いので注意が必要です。
・コートに直す場合、着物の内揚げ部分に焼けがあるとかなり目立ちますので、注意が必要です。


以上経験の中で問題になる事をあげてみましたが、比較的新しい物には、少ない問題です。ですが、古い物も魅力のあるものは、沢山ございます。なんとか生かしてゆくためには、その生地を愛情を持って見てあげられることだと思います。

                                                                                                                                                          

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